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伊賀は、四季折々の自然と歴史が共存するまちです。山々に囲まれた盆地には、古墳や寺院跡といった遺跡が点在し、上野城を中心とした城下町には、町家や石畳の風景が今も残ります。歩いて巡れる距離に見どころが集まり、どこか懐かしく穏やかな空気に包まれながら、文化や暮らしの風景に触れることができます。

坂倉準三建築

坂倉準三(1901–1969)は、20世紀に日本のモダニズム建築を牽引した建築家。フランスでル・コルビュジエに師事し、1937年パリ万博では日本館を設計。
「人間のための建築」という信念のもと、暮らしに寄り添う空間や家具デザインにも取り組みました。その思想は、まちに開かれた公共建築としての旧上野市庁舎にも色濃く表れています。

建築家

坂倉 準三

Junzo Sakakura

泊船の舞台となる旧上野市庁舎は、建築家・坂倉準三が晩年に設計した建築です。「人間のための建築」という思想のもと、庁舎でありながら人びとが自然に集い、迎え入れられるような公共空間としてつくられました。
まちの景観に調和する低層の構造や、2階に配された中庭が生み出す穏やかな空気は、今も訪れる人の心をそっとほぐしてくれます。
建物に入ってから気づくのは、光や風の通り方、素材の手触り、動線の工夫といった、細部にまで行き届いたデザインのちから。そこには、坂倉の思想と美意識が静かに息づいています。
現在は文化財として保存され、図書館とホテルが共存する場として再生。かつて市民のためにつくられた建築は、いま再び地域と旅人のためにひらかれています。

※図書館は2026年オープン予定

伊賀の街並み

伊賀のまちは、伝統産業と文化が息づく暮らしの舞台。伊賀焼や組み紐、傘づくりなど自然素材を活かしたものづくりが今も受け継がれています。また、俳聖・松尾芭蕉の故郷として知られ、俳句が日常に根づく風土もこの地の魅力のひとつです。

文化・歴史施設

伊賀には、上野城や歴史ある神社仏閣、資料館など、まちの記憶を今に伝える文化・歴史施設が点在しています。徒歩や自転車で気軽に巡れるのも、この土地ならではの魅力です。

  • 伊賀上野城

    徒歩7

    慶長16(1611)年に、築城の名手であった藤堂高虎によって修築された城郭。大阪城と並んで日本一、二の高さを誇る約30mの高石垣は圧巻で、黒澤明監督の映画「影武者」のロケ地にもなりました。現在の天守閣は昭和10(1935)年に木造で復興され、最上階の格天井には、横山大観の「満月」など著名な画家、文人、政治家の大色紙が46枚はめ込まれています。

  • 伊賀流忍者博物館

    徒歩7

    世界一の忍者資料を誇る博物館。江戸時代末期の土豪屋敷を移築した「からくり忍者屋敷」では、どんでん返しなどのさまざまな仕掛けを忍者やくノ一が実演しながら案内してくれます。手裏剣や水蜘蛛といった貴重な資料が展示されているほか、忍術実演ショーや手裏剣打ち体験も。謎に包まれた忍びの世界を垣間見ることができます。

  • 上野天神祭(上野天満宮、だんじり会館)

    徒歩7

    毎年10月に行われる、400余年の歴史を持つ上野天満宮の秋祭り「上野天神祭」。神輿行列を先頭に、百数十体の鬼行列、絢爛豪華な9基のだんじりが城下町を練り歩く様は壮観で、2016年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。「だんじり会館」では通年でだんじりの装飾を直近で見ることができます。

  • 旧崇広堂

    徒歩7

    江戸時代、伊賀・大和・山城の領地に住む藩士の子弟を教育するために建てられた藩校。入母屋造の講堂は創建当時の姿を保持しています。江戸時代教育建築の貴重な遺構と四季折々の表情を見せる庭園の調和が見事。現在は伝統芸能やアート展示などにも活用されています。

  • 松尾芭蕉ゆかりの地(芭蕉翁記念館、俳聖殿、蓑虫庵、史跡芭蕉翁生家)

    徒歩7

    紀行文『おくのほそ道』で知られる俳聖・松尾芭蕉は伊賀の出身。市内には生家をはじめ、侘び寂びを感じられる門弟の草庵「蓑虫庵」、芭蕉生誕300年を記念して建立された「俳聖殿」など、芭蕉ゆかりの地が点在しています。これらの場所を巡ることで、芭蕉の「軽み」の美学を感じてください。

  • 旧小田小学校本館

    徒歩15

    明治14(1881)年に建築された、現存する三重県最古の小学校校舎。木造洋風2階建ての寄棟造りで、エンタシス風の柱を用いた玄関ポーチや2階のバルコニーなど、細部にまで趣向が凝らされ、見どころ満載。特に当時の「ギヤマン」から復元した色ガラスが描き出す光の演出は必見です。

  • 伊賀くみひも 組匠の里

    徒歩3

    三重県の伝統的工芸品である「くみひも」は、美しく染め上げた絹糸や金銀糸を、丸台、高台など伝統的な組台で組み上げた紐のこと。糸の配色と組み方で生まれる幾何学模様は、シンプルゆえに無限の広がりを持ちます。組匠の里では、丸台を使ったくみひも作りを体験できます。

  • 伊賀焼伝統産業会館

    15

    伊賀焼の里・丸柱にある、伊賀焼の展示や販売をしている資料館。20軒余りの窯元の作品が一堂に展示されているので、ここを起点に窯元巡りをするのもおすすめです。手ひねり、電動ろくろによる作陶、絵付けといった本格的な陶芸体験もできます。

  • 武家屋敷(赤井家住宅、入交家住宅)

    徒歩7

    上野城下町に残された数少ない武家屋敷のひとつ「赤井家住宅」は国登録有形文化財で、建物に配された赤が特徴的。現在は文化施設として、さまざまなイベントが行われています。「入交家住宅」は武家屋敷の特徴である長屋門のほか、土間、主屋、座敷、丸窓のある茶室などなど、映画のワンシーンに出てきそうな本格的な武家屋敷を見学できます。

  • 上野高校明治校舎(旧三重県第三尋常中学校校舎)

    徒歩5

    1900(明治33)年、旧県第三中学校の時代に建てられた「上野高校明治校舎」。和風建築の入母屋屋根に、洋風の玄関ポーチや窓が取り入れられている和洋折衷の造りが印象的で、国の重要文化財である旧三重県庁舎などを手がけた清水義八が設計。通常は非公開ですが、校門越しに全国的に貴重な建築を眺めることができます。

周辺施設

地域の素材を活かした食や工芸も、伊賀の旅を彩る大きな楽しみのひとつ。
ホテル周辺には、地元に愛される老舗や食文化に触れられる名店が揃っています。

  • 元祖伊賀肉 金谷

    徒歩10

    明治38(1905)年創業の「元祖伊賀肉 金谷」は伊賀牛を世に広めたことで有名な老舗。盆地特有の気候と豊かな自然が育んだ伊賀肉は、霜降りと赤身のバランスがよく、肉質が細かいのが特徴。最高級の伊賀肉を砂糖と醤油でのみ炊いた名物の「寿き焼き」は、とろけるようなやわらかさで、芳香な香りとコクが口いっぱいに広がります。

  • 森喜酒造場

    9

    醸造用アルコールを一切添加しない、米と麹、水だけで醸す「純米酒」のみを造る、明治30(1897)年創業の小さな酒蔵。300石の少量生産だからこそできる丁寧な酒造りが信条で、近年は無農薬栽培の米作りにも取り組んでいます。事前予約をすれば、江戸時代末期に建築された酒蔵を見学することも可能です。

  • 伊賀焼窯元 長谷園ながたにえん

    17

    江戸後期の天保3(1832)年に伊賀市丸柱で開窯。伊賀焼の伝統を継承しながら、現代の暮らしに役立つものづくりを続け、看板商品の「かまどさん」はグッドデザイン賞を受賞しています。日本最大級の16連房旧登り窯や築200年の茅葺きの当主屋敷など見どころが満載なので、歴史と自然を感じながらゆっくりと散策したい。

  • 圡楽

    17

    丸柱地区で江戸時代より続く窯元。耐火度の強い伊賀の粘土を活かし、手挽きろくろによるものづくりを継承しています。7代目・福森雅武さん考案の「黒鍋」はステーキが焼ける土鍋としても知られ、随筆家の白洲正子さんも愛用していたそう。現当主の道歩さんは料理人としての視点を持ち、土鍋を日常で使うことを提案しています。
    ※予約必須

  • gallery yamahon(Cafe & Library Noka)

    15

    伊賀焼の里・丸柱にある、遠方からわざわざ足を運ぶ人が多いギャラリー。年に5〜6回企画展を行うほか、常設の空間にはギャラリスト兼建築家の山本忠臣さんが吟味した作家ものの器やハイセンスな雑貨が並んでいます。展示を見た後は、併設のカフェでゆっくりと香り高いコーヒーや手作りの焼き菓子を楽しめます。

  • 桔梗屋織居

    徒歩6

    江戸時代より400年以上続く、伊賀で最も歴史のある老舗菓子処。伊賀の歴史や文化・風土に根ざしたお菓子をひとつひとつ手作業で丹精込めて作り続けています。近年は、のどに詰まりにくい「おかゆ大福」を開発して話題に。伝統を継承しながら、時代の変化に合わせた革新的な菓子づくりを追求しています。

  • 湖月堂

    徒歩8

    明治創業以来5代にわたり、伊賀の風土にあった和菓子を継承してきた地元に愛される店。代表菓子の『伊賀名物 元祖 丁稚ようかん』は、砂糖を減量した代わりに黒砂糖や吉野の本葛を加え、上品でつるりとした喉越しが特徴。丁稚ようかんの上に季節の果物などの寒天とジュレを重ねた和洋折衷の「季節の雫」も人気です。

  • リス イタリア料理店

    徒歩14

    「このまちを、料理で、再発見する」がコンセプトのイタリア料理店。伊賀・三重県産の野菜・フルーツ、お肉など、旬の食材を使っているため、メニューはおまかせコースのみ。長屋をリノベーションした落ち着いた雰囲気の店内と温かな接客の中で、目でも舌でも伊賀の美しさを堪能することができます。※1営業日前までに要予約

  • HANAMORI
    COFFEE STAND

    徒歩9

    築130年の町屋を改装した複合施設「西町や かかん」にある「HANAMORI COFFEE STAND」。伊賀米の米粉パンを、綿実油をブレンドした油で揚げたサクサクもっちりの「あげぱん」が人気。イートインもテイクアウトも可能なので、伊賀散策のひとやすみに立ち寄りたいスポットです。

SAKAKURA BASE of the former Ueno City Hall, 116, Uenomarunouchi, Iga, Mie, 518-0823, Japan